梶研究室

高効率「青色」発光有機EL素子の開発
〜高性能青色熱活性化型遅延蛍光材料の利用により外部量子収率25%を超えることに成功〜

本成果は、2017年3月21日(水)に国際学術雑誌「Scientific Reports」にオンライン公開されました。

 京都大学化学研究所 梶弘典教授、久保勝誠氏(大学院生)、三輪卓也氏(大学院生、当時)、志津功將助教のグループは、九州大学 安達千波矢教授らのグループとの共同研究により、高性能青色熱活性化型遅延蛍光材料の利用により外部量子収率25%を超える青色有機EL素子の開発に成功しました。
 

概要

 有機ELは、電気を光に変換することができる素子です。スマートフォンやApple Watchなど中小型ディスプレイ、また、大型の有機ELテレビや白色照明への実用化も進みつつあり、今後、さらなる実用化への大きな進展が期待されています。
 これらディスプレイおよび照明には、青色、緑色、赤色の、いわゆる三原色を発する発光性有機分子およびそれを用いた素子の開発が必須です。その中で、近年、新たなタイプの有機ELとして、(参考文献1)。このTADF系有機EL素子は、従来の蛍光系有機ELよりも遙かに高性能であり、また、りん光系のようにイリジウム(Ir)や白金(Pt)といった資源偏在の問題がある元素を含まない、普遍的に存在している元素のみからなる分子であるという点で、大きな注目を集めています。我々も、高い(参考文献2)。今回、「青色」に発光する有機EL素子においても、25.9%のEQEを得るとともに、さらに光取り出しを工夫することにより33.3%のEQEを得ることに成功しました。
 これまでの高特性TADF系青色有機EL素子は、発光波長がやや長く、多くはスカイブルーでした。今回の我々の素子では、その発光波長が471 nm、CIE座標としては(x, y) = (0.15, 0.22)と従来に比べて深い青色を発現しています。その結果、これまでより色再現性に優れたディスプレイ、照明への応用が可能となります。今後、さらに深い青色と高効率を両立させた有機EL素子の開発を目指します。

 
上段図:今回用いた有機ELの素子構造と各種周辺材料。素子A (左図)から素子B (右図)に変更することにより、特性が大幅に向上(下段図左参照)。
中段図:(左) 今回用いた有機EL発光材料。(右) 素子B、発光分子CCX-IIを用いた場合の実際の発光の様子。
下段図:(左) 外部量子収率(EQE)の改善の様子。(右) 素子B、発光分子CCX-I、CCX-IIを用いた場合のCIE座標。
 

参考文献

(1)Uoyama, H.; Goushi, K.; Shizu, K.; Nomura, H.; Adachi, C., Highly Efficient Organic Light-emitting Diodes from Delayed Fluorescence, Nature, 492, 234 (2012).

(2)Kaji, H.; Suzuki, H.; Fukushima, T.; Shizu, K.; Suzuki, K.; Kubo, S.; Komino, T.; Oiwa, H.; Suzuki, F.; Wakamiya, A.; Murata, Y.; Adachi, C., Purely Organic Electroluminescent Material Realizing 100% Conversion from Electricity to Light, Nature Communications, 6, 8476 (2015).

 

●用語解説●

有機EL: 電界を印加することよる発光をエレクトロルミネッセンス(EL)という。特に、有機物質が発光する場合、有機ELと呼ぶ。

 

熱活性化型遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence, TADF)材料: 

通常起こらない三重項励起子から一重項励起子への変換を経由して発光する材料。熱により活性化され、また、通常の蛍光材料よりも長い蛍光寿命を示すため、熱活性化型遅延蛍光材料と呼ばれる。その高いポテンシャルのために、有機ELの発光材料として最近特に注目され、基礎面でも応用面でも活発な研究が進められている。(励起子:電子と正孔がペアになったものを励起子と呼ぶ。励起子には一重項励起子と三重項励起子の2種があり、一重項励起子からは蛍光が得られる一方、三重項励起子からはイリジウムや白金が存在する場合など特殊な状況を除き、通常、熱として失活してしまう。)

 

外部量子収率(External Quantum Efficiency, EQE): 素子に注入された電子と正孔の数に対する、素子の外部まで取り出すことができた光子(フォトン)の数。素子の効率を表す重要な指標の一つで、その理論限界は20~30%と言われている。

 

CIE座標: 色を定量的に表す体系の一つ。国際照明委員会(Commission internationale de l’éclairage, CIE)により開発されたもので、広く使用されている。

  
Miwa, T.; Kubo, S.; Shizu, K.; Komino, T.; Adachi, C.; Kaji, H., Blue Organic Light-emitting Diodes Realizing External Quantum Efficiency over 25% Using Thermally Activated Delayed Fluorescence Emitters, Scientific Reports, 7, 284 (2017).
DOI:10.1038/s41598-017-00368-5
Published 21 March 2017